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2010年10月07日

東南アジアのおもしろ話12-ブラックタイガー-

   エビを食べることは決して嫌いではない。むしろ、好物である。タルタルソースとの相性抜群の香り芳しい「エビフライ」、透明感があるプリップリの「エビのチリソース炒め」、B級グルメの王様「エビチャーハン」、とろけるような「おさしみ」、クリームソースと絶妙なコラボの「エビグラタン」、代表的日本のファーストフード「天丼」など枚挙に暇がなく、和洋中なんでも合うまさに食材の王道を行っていると思う。私個人的には、新鮮な甘エビの煮付けの頭の部分の味噌をチュルチュルと吸った瞬間に至福の時間を感じる。エビ味噌の濃厚かつ上品で芳醇な味わいといったら他の食材の追随を決して許さない。それから、昔、バンコクの有名イタリアン店で食べた、丁寧に下ごしらえしたオマールエビの味噌と身を漉した赤みがかったクリームスープも味わい深くて本当に美味しかったなあ・・・

 でも、スーパーマーケット(主に行くのがチューリップ)の魚介類売場で白黒斑の「ブラックタイガー」が目に入ると直視できずに通り過ぎてしまう状態が何年も続いている。自ら殻付き輸入エビは絶対に買わない。いや買えない。完全にトラウマとなっている。

 

 

 

【通称ーブッラックタイガー(学名:Panaeus monodon)】(クルマエビ属ウシエビ科)

 実は、10年ほど前に脱サラして、レストラン経営の傍ら、バンコクからパタヤ方向へ200kmほど南下したラヨン県で、1年近く副業としてブラックタイガーの養殖をタイ人の友人と共同経営で手懸けたことがある。当時、エビ養殖ブームがまだ続いており、海から30km以上内地に入った丘陵地帯の友人所有の土地に、まず、40m×80m(2ライ)に深さ1mの掘削を行い、周り高さ2mくらいの堤防を造成し、下の写真のような池を完成させた。 

 

 

 

 

 エビ養殖事業について簡単に説明すると、エビの養殖期間は、まず最初に稚エビを購入してから15cm以上まで成長するのに約4ヶ月かかる。その後、仲買人に連絡し、池の水を抜きタモでエビを収穫し、すぐさま氷詰めにし市場に出荷され、そのほとんどが日本に輸出される。買取基準は基本的には総重量(kg)だが、エビが大きければ大きいほどランク(単価)が上がるという仕組みになっている。初期投資には、池の造成費用、発電機、水中ポンプ、水中酸素を補う曝気装置、それから稚エビ購入費など2百万円ほどかかる。ランニングコストとしては、稚エビのエサ代、燃料代、薬品、最後に見張り番2名の人件費が必要となってくる。

 近くの水源地から池に水を満たした後、稚エビを放流する。意外にもブラックタイガーの稚エビは3cmくらいのまるで楊枝のような姿形で 、直線的な動きしかできずエビ反りもしない。当初は水面上を可愛らしく泳いでいたが、成長するに従って水面下に潜り、その生態はベールに隠れてしまった。

 

 

 

 

 結果から言えばウン百万円も大損し、1年もたずに撤退した訳だが、その難しさの理由を並べると以下のようになる。

@エビ養殖事業とはウイルス汚染や病気との戦いである。まず、塩分濃度が低いと成長は早いが、発病の恐れがある。反対に、塩分濃度が高いと、味は良いが成長が遅く、海水運搬の経費がかかる。次いで水質管理(PH)が重要でPH6以下は危険で常にアルカリ性の状態を維持しなければならない。最後に、水温管理で、水の供給により絶えず水温調節をしなければならない。酷暑期には事業は中断となる。

A近くの水源地から引いた水に魚の卵が混ざっており、エビより成長が早い魚にとってはエビが食べ放題の状況になっている。また、野鳥も空中攻撃をしかけてくる。

B水田のような小さな区画で高密度、24時間体制での池の管理を行う「集約養殖(焼畑式養殖)」では、残餌、排泄物の池底蓄積による硫化水素、アンモニアなどの有毒成分が発生し、5年が寿命といわれ、跡地は放置される。塩害などもあり、農地転用も難しい。

Cおおよその予想はつくが、池の水が濁水であるため、その正確な収穫量、個体の大きさは実際に水揚げするまでわからない。これがエビ養殖がギャンブルといわれる所以である。

 最後に、実際にこの事業に携わった経験者として、輸入エビの安全性について話したい。

 事業者の誰もが大きく育て、高く売りたいと考えており、水揚げする時というのは、ウイルス汚染や病気でエビが死にかけ始めた時である場合が多い。また、詳しいことはよく分からないが、エサ小屋を覗いてみると、いかにも怪しげな除草剤、抗生物質、栄養剤、抗菌剤などの化学薬品の袋が置かれ、状況に応じ投与されているということであった。これが人体に悪影響を及ぼさないはずがない。

 今、ブラックタイガーはインドとインドネシアからの輸入が大半となっているが、昔日の勢いはなく、@ウイルスの蔓延Aホワイトスポット病Bエビのストレスなどの理由により、ブラックタイガーの養殖自体が崩壊危機に直面しているらしい。代わりに、小型だが病気に強いバナメイ(白えび)がエビ養殖の主役に躍り出たらしい。地元民がマングローブを伐採しエビ養殖事業に転用したことによる水害、土砂流出、海洋資源枯渇などの自然環境破壊の問題を含め、エビ最大輸入国の日本はそろそろ飽食の文化を見直す時期が来ていると思う。

 要するに日本人はエビを食べすぎなのである。

 とにかく、これからは地産地消を心がけ、少し高くても生の近海物を買うようにし、身の安全のためも輸入有頭エビのフライや天ぷらを頭からガリガリ食べたり、チュルチュル吸うような真似はくれぐれもやめてもらいたいと願っている。

投稿者:S・Kat 16:22| 日記 | コメント(0) | トラックバック(1)

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ブログタイトル:[ レイバン ウェイファーラー]
記事タイトル:レイバン ウェイファーラー
記事概要:人事担当者のひとりごと(2013夏):東南アジアのおもしろ話12-ブラックタイガー-

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